田舎で暮らす3人の両親…これから始まる介護への備えを教えて!という相談に介護のプロ太田さんが回答

50代からの女性のための人生相談・130
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は、52歳女性の「遠方で暮らす夫と私の両親。これから始まるであろう介護が不安です」という相談に、介護・暮らしのジャーナリスト、太田差惠子さんが回答します。
52歳女性の「遠方の両親、今後の介護」についての相談
夫婦ともに50代前半の二人暮らし。どちらも父親は80代前半で、母親は70代前半です。現在、私の父親だけは老人ホームに入居中ですが、夫の両親と私の母は田舎で自宅暮らしをしています。
近々私の母も義理の両親も、介護が必要になるため、どのように進めていったらいいか、漠然とした不安があります。
私自身も50代になり、遠距離の移動が疲れるようになってしまったので、介護が必要になった場合、しょっちゅう行き来をするのは難しいのでは?と思っています。
両親が元気なうちに進めておくべき準備や、揃えておくべき書類などはありますか?また、実際に介護が必要になった場合、私自身の生活をどのように変えていくべきなのでしょうか?
(52歳女性・MMさん)
太田さんの回答:自身のライフスタイルは大きく変えない

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ご自身のお母様、そして配偶者のご両親が田舎の自宅で暮らしておられ、将来に対しご不安があるのですね。
MMさんのお父様が老人ホームに入っておられるとのことなので、もしかすると、介護が必要になる過程を経験されたのかもしれません。確かに、遠方の親が倒れると、行ったり来たりの往復の頻度が高まります。
多くの場合、入院を経て、在宅での介護か、それとも施設かと検討し、親との意見調整を行うことになります。先のことが見通せず、精神的にも肉体的にもへとへとになる期間が生じがちです。
これから先、3人の親に何が起こるか予想ができないため、ご心配される気持ち、お察しいたします。
けれども、その緊迫した期間が永遠に続くわけではありません。介護が長期化するケースでも、初動をしっかり行うことで安定する期間が訪れます。
初動とは、施設介護を選んだ場合に限った話ではなく、在宅介護の場合でも同じです。しっかりケアマネジャーと相談し、必要なサービスを入れることができれば生活はまわるようになります。
できることをできる範囲で!大風呂敷は広げない

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遠距離介護が始まる際に気を付けたいポイントがあります。
例えば、親の要介護度が進むと「頻繁に通わなくては」と思い詰める人がいます。優しさからか、別居していることへの罪悪感からか(本来、罪悪感は不要です)、親本人にまで「これからは、頻繁に来るよ」と言葉にしてしまう人も珍しくありません。
いったん「頻繁な帰省」と決めると、親もそのつもりになります。結果、帰省頻度を下げると、「冷たくなった」と責められることも……。自分自身も、後ろめたくなり精神的に追い詰められていくケースもあります。
親の介護が始まっても大風呂敷は広げない。できるだけ、自分自身のライフスタイルを変えないことを目標にしましょう。自分が頻繁に帰らなくても介護がまわる体制を築くのです。
コロナ禍では、多くの子が帰省頻度を下げることになりました。担当のケアマネジャーや医師などと電話で連絡を取り合うことで、2年ほど会わなくても、乗り越えられた人は大勢いました。
直接、親と会えなくても、メールや電話で連絡を取ったり、見守りサービスで安否確認をしたり。親にLINEのビデオチャットを教え「顔を見て話せた」という人もいます。
もちろん、うまくいったケースばかりでなく、会えないうちに親の心身機能が低下した、という声も聞かないわけではありません。けれども、親子とはいえ、できることとできないことがあります。
今後も、コロナのような感染症が流行ったり、自分自身や現在の同居家族が病気になったり、仕事の都合だったりで、帰省がままならなくなることもあり得ます。
今のうちに離れていてもコミュニケーションを確保できる方法を構築しておければ安心です。そして、その時がきたら、親の地元の地域包括支援センターやケアマネジャーとタッグを組み、サービスを入れて介護を行いましょう。
親のため、自分自身のために無理のない範囲で。できないことには手を出さず、できることを行えばよいのではないでしょうか。
■回答者プロフィール:太田差惠子さん
おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など多数。最新刊は『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(翔泳社)。

ハルメク365
ハルメク365編集部
2023年5月3日RT(10)
見 守(KEN MAMORU)

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