地域の再構築 課題山積 東日本大震災12年

災害公営住宅「錦町東住宅」の住宅会役員会=宮城県塩釜市
群馬】2月中旬。宮城県塩釜市の災害公営住宅「錦町東住宅」(約70世帯)の入居者ら約20人が、集会所で話し合っていた。住民自治組織「住宅会」の役員会だ。
議題は新年度の役員改選だったが、入居者アンケートで名乗りを上げた人はいなかった。現役員の続投となる見通しだ。

建物が完成し、入居して6年がたつ。住宅会長を務める松田美和子さん(79)は「いまだに顔と名前が一致しない人もいる。高齢者が多く、全世帯参加の行事に出られない方もいます。役員のなり手を確保しようにも難しい」と話す。
災害公営住宅では高齢化が進む。宮城県の2020年度の調査では、災害公営住宅の入居者のうち、65歳以上の割合は55%。県平均の約2倍の水準だ。
自治活動に若い世代を取り込むことが課題だが、災害公営住宅家賃は、基準の収入を超えると収入増に応じて上昇する仕組み。比較的所得の高い現役世代が退去する例もある。
災害公営住宅に限らず、行政はコミュニティーに、高齢者の見守り機能も期待している。自主的に見守り活動に取り組む自治組織が、同県東松島市にある。
被災者が集団移転した「あおい地区」だ。戸建てや災害公営住宅などに、計約600世帯が暮らす。
住民組織「あおい地区会」の見守り隊員約10人が高齢者約230人の自宅を月1、2回程度訪れる。有償ボランティアで、地区会から報酬が支払われる。地区会は、活動資金として行政の復興支援関連の補助金を活用している。
将来的に補助制度が無くなることを想定し、市に地域の見守り活動を業務委託するよう要望しているが、実現はしていない。地区会の小野竹一会長(75)は、「行政の見守り事業の対象は災害公営住宅。戸建ては対象外で、地区会がカバーしている状況。隊員は住民なので、何かあれば夜中でも対応できる」と話す。

異常気象がもたらす自然災害は毎年のように各地で発生している。歴史を振り返れば、内陸でも「山津波」が起きた。決して人ごとではない。(角津栄一)
国は、災害発生後に、迅速な復旧、復興を進めるため、平時から手順や進め方を決めておく「復興事前準備」を推進している。

自治体に実施を促すため、2018年には「復興まちづくりのための事前準備ガイドライン」を策定。取り組み内容として、復興手順や体制の検討など5項目を示した。しかし国の調査(22年7月)では、いずれかの取り組みを「検討済み」、または「検討段階」と回答したのは自治体全体の55%だった。
今年2月には、震災後10年間の復興政策を検証する復興庁の有識者会議が、復興事前準備は「防災・減災対策」と並行して進めることが重要だと、報告書素案に盛り込んだ。