能登の地震1週間、復旧へ高齢化が壁…片付け「1人で運べない」

石川県珠洲(すず)市で震度6強を観測した地震から12日で1週間となる。11日には市が募集した災害ボランティアの活動が始まり、復旧作業が本格化した。人口の半数超を高齢者が占める同市では、余震で眠れない夜を過ごすなか、家屋の修復や片付けを自力で行えない被災者も多く、ボランティアらによる支援がカギとなる。
■手つかずの状態
市社会福祉協議会の事務所に11日朝、ボランティア24人が集まった後、被災住宅4軒で災害ごみの運搬などを手伝った。同市蛸島(たこじま)町地区の女性(77)は、自宅に訪れたボランティアが壊れた外壁や割れた花瓶を運び出す作業を見守りつつ、「一人では重くてどうしようもなかった」と、ほっとした表情を浮かべた。
石川県によると、11日午後1時時点での住宅被害は630棟。全半壊28棟を含め、628棟が同市で確認された。中でも、蛸島町地区に隣接する同市正院町地区の被害が最も大きく、崩れた住宅が目立つほか、壊れたブロック塀や割れた窓ガラスが手つかずの状態だ。
■2人に1人
復旧作業が進まない背景には、2人に1人が高齢者という人口構成も影響している。県によると、昨年10月時点の同市の人口は、65歳以上が52・8%を占めている。一人暮らしの同地区の女性(81)は「タンスを処分したいが、自分では運べない」と話す。
今回の地震では、同市で1人が亡くなり、石川、富山両県で37人が重軽傷を負った。さらに5日以降も続く余震に、被災者は不安を抱えながら過ごしている。
同地区の男性(81)は「なかなか眠れず、気づけば朝になっている。いい加減、収束してほしい」と訴える。市の担当者は「高齢で手を貸してほしい市民が多く、ボランティアの助けを借りて早い復旧につなげたい」と語る。
■観光に影
地震は、揺れによる直接的な被害だけでなく、観光にも暗い影を落とす。
特産・珠洲焼の制作体験ができる同市陶芸センター(蛸島町)は、金沢市内から今月下旬に迎え入れるはずだったツアーがキャンセルとなった。担当者は「珠洲を訪れることに不安を持たれているかもしれない」と心配する。
珠洲市宝立町鵜飼の宿泊施設「のとじ荘」の松村京子支配人は「コロナも落ち着いて客入りを期待していただけに残念だ」と落胆した。
◇
気象庁によると、5日の震度6強の地震の後、能登地方では11日午後4時までに震度1以上の地震が93回起きた。10日にも最大震度4の揺れがあった。
11日の記者会見で同庁の下山利浩・地震情報企画官は、「回数は減ってはいるが、活発な状況が依然続いている」と述べた。

読売新聞