子どもの安全安心はどこへ?内閣府・子どもの貧困対策有識者会議であきらかになった深刻な実態と必要な支援

大阪府立大学山野則子教授研究室ホームページより
子育て世帯の2割弱、ひとり親世帯の35%に食料が買えない経験がある日本
五輪で弁当が大量廃棄される中、食事すら満足にできない子どもは置き去りか?
7月28日に内閣府子どもの貧困対策に関する有識者会議が開催されました。
私を含めた委員からは、コロナ禍の中で、貧困状態の子どもや保護者のあまりに深刻な実態と、抜本的な支援策の必要性が指摘されました。
この記事では、委員から報告された子どもの貧困の深刻な実態と、提言や意見のあった必要な支援についてまとめています。
そもそもコロナ禍の前から、子育て世帯の2割弱、ひとり親世帯の35%に食料が買えない経験がある、厳しい日本の実態が存在しています。

内閣府作成資料・子供の貧困の状況より

五輪で弁当が大量廃棄されるいっぽうで、食事すら満足にできない子どもへの支援策はまったく不足しています。
菅総理は安全・安心なオリンピックを強調しましたが、子どもたちの安全・安心は置き去りでしょうか?
子どもの貧困対策は進化しつつある、しかし・・
困窮子育て世帯給付金へのプッシュ型支援、高等教育の無償化、教育・福祉等データベース

政府は何もしていないわけではありません。
子どもの貧困対策は進化しつつあります。
厚生労働省は、困窮子育て世帯に対し給付金を手続き不要で振り込むプッシュ型支援を実現しました。これは子どもの貧困対策のスキームとして画期的なことです。
文部科学省は、高等教育の無償化を家計急変世代にも適用し、30万人弱の大学生・専修学校生等が利用し、学んでいることもあきらかにされました。
また、児童養護施設からの大学等進学率も2019年度・28.3%→2020年度33.0%に4.7ポイント改善するなど、困難な状況の中にあっても進学を希望する若者たちの支えとなっています。
また内閣府は教育・福祉等データベースの構築に取り組んでおり、貧困・虐待に苦しむ子ども・若者や、支援制度の存在自体を知らない困窮世帯へのプッシュ型支援につなげようとしています。
しかし、それだけで、日本の子どもの貧困問題は改善しないのです。
9割の子どもがストレス、休校中の性的問題も増加
一斉休校の深刻な影響、しかし支援は・・・

大阪府立大学の山野則子教授(内閣府有識者会議委員)は、困難な状況にある子どもたちの9割がストレスを感じていること、さらに3割が不登校予備群と判断できる状況にあることをあきらかにされました。
またさらにショッキングなことに、一斉休校明けの学校再開後に、大阪・東京等の感染状況が深刻だった地域で、児童相談所が性的な問題を把握した件数が増加したことが判明しています。

大阪府立大学・山野則子教授研究室ホームページより

休校期間中には、家族に気を使ったり、監視下にある中で、虐待相談すらできず、休校明けに学校での事例発見がされたケースが相次いだことを示唆します。
また一斉休校で職を失った保護者も多かったことから緊急事態宣言中の2020年4月5月は児童相談所における貧困関係の相談が急増したことも、判明しました(この記事の冒頭の折れ線グラフ)。
これらのデータは大阪府立大学・山野則子教授の研究室ホームページにて公開されています。
山野教授は、今後のパンデミック時にも「一斉休校はやってはいけないこと」であると指摘しています。
私もとくに虐待貧困リスクの高い子どもたちの見守りは学校という場で行うべきだと考えています。
イギリスの例にならい、教員がすべて抱え込むのではなく、家族支援員、スクールソーシャルワーカー・カウンセラーなどの専門職や児童相談所・警察等との連携のもと食の保障や学びの保障などを継続できる体制づくりが必要です。
これが日本でできなければ、一斉休校の経験は何も生かされないことになります。

肉や魚も食べられず、進学も断念
政府はなにもしてくれない、本当に先進国なのか?

渡辺由美子委員(キッズドア理事長)からも、子どもの貧困対策の専門家しかいない内閣府委員が聴いても胸の苦しくなるような、厳しい子どもと保護者の現状が紹介されました。
キッズドアが支援した困窮子育て世帯に対する調査です。
食料が買えなかった世帯が約半数(47%)、電気ガス水道のライフライン滞納が1/3、より安い食品を買うようになった世帯が8割です。
苦しい生活状況を経験しなかったのは、わずか4%にすぎません。

キッズドア調査より

渡辺委員からは、困窮世帯から寄せられた実際の声も紹介されていました。
・肉や魚もなかなか食べられない
・政府は何もしてくれない
また4割の子どもが希望する進路に進めない可能性があります。

キッズドア調査より

キッズドアの受験生への支援金を受けた若者への調査でも、お金がなくて共通テストすら受けられない、1校しか受験できない、などの厳しい実態があきらかになっています。
詳しい結果は渡辺由美子さんのnoteでも発信されています。
いまこの瞬間に夢をあきらめている若者が同じ社会を生きているのです。
いまこそ現金給付を拡充しないと将来の日本が崩れる!
子育て罰をなくし、貧困状態の子どもに十分な衣食住と学びを

子どもの貧困対策の改善のためには現金給付(児童手当・児童扶養手当)の拡充が最優先です。
現金給付の重要性については、私自身も7月14日に出版した『子育て罰―「親子に冷たい日本」を変えるには―』(桜井啓太さんとの共著・光文社新書)で指摘したところです。
キッズドアの調査でも、現金給付が必要だというのが当事者の意見です。
他団体の調査でもまったく同じ傾向が出ています(公益財団法人あすのば・1500人アンケート)。
キッズドア調査では、困窮子育て世帯への特別給付金の要望が多かったですが、実際には平時の児童手当・児童扶養手当の拡充こそが、どの子どもたちにも十分な衣食住を保障し、あきらめず夢をもって学ぶことを可能にする基礎的条件なのです。
子どもの貧困等にかかわる13団体の、政府への共同提言でも児童手当・児童手当拡充は最優先の要望事項であり、私もこの要望を内閣府委員として意見書に掲載しました。

子どもの貧困対策法成立8周年院内集会・13団体共同要望書より

おわりに
子どもの安全安心はオリンピックの中で置き去りにされていいのか?

オリンピックに熱狂する人も多い日本ですが、子どもの安全・安心は置き去りでいいのでしょうか?
政治の取り組みはもちろん必要ですが、この日本社会を生きる大人たちの無関心がいまの状況を生み出しています。
オリンピック精神とはスポーツを通じた人権の推進でもあります。
すべての子どもたちがオリンピックを楽しめる日本ではないことを、読者のみなさんもあらためて認識いただき、たとえば支援団体に寄付をしたり、子どもたちへのボランティア等に取り組んでいただくなど、できるアクションを探していただく機会になれば幸いです。

末冨芳

日本大学教授・内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議構成員
末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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2021年7月31日RT(7)
見 守(KEN MAMORU)

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